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労働者に楽園を_『ロボット』チャペック作 千野栄一訳 岩波文庫

『ロボット』は、1921年にチェコスロヴァキアのカレル・チャペックが発表した戯曲。「ロボット」という語はここから一般に使われるようになった。

『ロボット』は、労働用ロボットを作るR・U・R社を舞台に、R・U・R社の社長ドミンを中心とした急進派の役員たちと、R・U・R社の建築主任である保守派のアルクビストとの対立的会話をもって進行される。



労働用ロボットの製造・販売を行うR・U・R社の社長ドミン氏は願う。神に代わって自分が、世界をもう一度創り直したい。

彼の願いが全人類共通の願いになるよう、ドミンは社長として世界にロボットの存在する素晴らしさを喧伝する。ロボットがいるがゆえの楽園のような世界は、次のように標榜されている。

労働ロボットは、今まで長きにわたり「人間が耐えなければならなかった」「ひどい労働」、またそれに伴う「辱め」や「痛み」「貧困」から世界中の人間を解放します。つまり、ロボットを買い、労働を代替させたからには、「何もかも生きた機械がやってくれる」ようになり、「人間が主人になる」のです。ロボットを得た人間は労働から解放され、「好きなことだけ」をして「自分を完成させるためのみ生きる」。ロボットによって口まで運んでくれるから、「食物に手を差しのべることすらしな」くなり、「仕事のせいで年をとることもなく、子供のために年をとることもなく、貧困のために年をとることもない。」

ドミンが約束する楽園のような未来像がどこまで一般に信じられていたかについては書かれていないが、

R・U・R社の販売する労働ロボットは世界に広まり、安価な労働力での生産を可能にしていった。

ロボットの登場により、人間の労働者があぶれたが、その問題についてドミン氏は「過渡期」だと言う。

過渡期を経て、やがて理想の世界、ドミンが支配する世界が誕生するーー。



世界に広まるロボットだったが、それを製造・販売するR・U・R社内に、ロボットがもたらす世界の進歩を怖がるひとりの建築主任・アルクビストがいた。

彼はロボットが労働し人間は「好きなことだけ」をする世界に懐疑的な姿勢を示す。

アルクビストは言う。「奉仕の中に良いものが」「恭順さの中に偉大さが」「労働や疲労の中に徳があった」。

とはいえアルクビストはその進歩を促してきたR・U・R社で働き、つまりドミンが掲げる未来を創るのに加担しつつ、進歩が怖いときには「主任の上着をぬいで足場に上がり壁を作」り、そして「神に祈り、奇跡を待つ」という「非生産的」な、非ロボット的な、人間的な行為をするだけで、ドミンたちが願う未来を変えることはだできない。

ドミンとアルクビストの前に、問題が次々と発生したのった。

人間の女性が子どもを産まなくなった。

ロボットたちが反抗を起こす。「ロボットのように有能ではなく、何もしないでただ命令するだけ、よけいなおしゃべりをしているだけの人間」に対して、労働するロボットたちは、今度は逆に自分たちが彼らの支配者であろうと試みる。

いよいよロボットは武器を持ち、人間を殺しにかかる。

ただ一人、アルクビストだけが生き残った。

アルクビスト「非生産的」な、非ロボット的な、人間的な行いは、人類の破滅を止めることはできなかったが、彼は唯一人生き残ることができたのだった。

人間が死に絶えた世界でアルクビストは、お互いの命を投げ打って愛そうとする2人のロボット(アダムとイヴ)を目撃する。人間が死に絶えた世界で、ロボットは人間になったのだった。

そしてまた、「三億七千万の繰り返し」が始まる—-。